和時計が不定時法に対応する方法は、天符で速度を変える方式だけではありません。もうひとつの方法が「割駒(わりごま)」方式です。時計の速度は一定のまま、文字盤の目盛りのほうを動かすという逆転の発想でした。
割駒方式とは――文字盤を動かす和時計
割駒方式の和時計では、文字盤に刻まれた時刻の目盛りが固定されていません。「割駒」と呼ばれる小さな駒が溝に沿って移動できるようになっており、季節に応じて駒の間隔を手動で調整します。
夏は昼の割駒の間隔を広げ、夜の割駒の間隔を狭めます。冬はその逆です。こうすることで、一定速度で回る針が、不定時法の正しい時刻を指し示すのです。
割駒方式の仕組みを詳しく見る
割駒方式の和時計の文字盤は、通常の時計のように等間隔ではありません。円形の文字盤に12個の割駒が配置されていますが、それぞれが溝の中をスライドできるようになっています。
例えば夏至の設定では、昼の6つの割駒は広い間隔で配置され、夜の6つの割駒は狭い間隔になります。針は一定速度で回りますが、昼の目盛りが広いため「昼の一刻」は長く感じられ、夜の目盛りが狭いため「夜の一刻」は短く感じられます。実際の不定時法と同じ効果を生み出しているのです。
割駒方式と天符方式の比較
天符方式は時計自体の速度を変えるアプローチです。二挺天符では昼と夜で自動切り替えが可能ですが、機構は複雑で高価になります。
割駒方式は時計の機構はシンプルなままで、読み取り側で補正するアプローチです。構造が単純なため製造コストは抑えられますが、季節ごとに割駒の位置を手動で調整する手間がかかります。通常、二十四節気に合わせて年24回の調整が必要でした。
両方式にはそれぞれ利点があり、用途や所有者の好みに応じて使い分けられていました。実際には天符方式と割駒方式を組み合わせた和時計も存在します。
割駒の芸術性
割駒には実用性だけでなく、装飾的な美しさもありました。十二支の動物が彫り込まれた割駒、蒔絵が施された文字盤など、和時計は精密機械であると同時に美術工芸品でもあったのです。
現代の独立時計師・菊野昌宏氏は、割駒が季節の変化に合わせて自動的に移動する世界初の機構を持つ腕時計を製作しています。江戸の割駒の知恵は、現代の最先端技術で進化を続けているのです。
割駒の動きを和時計で見る
当サイトの「浮世之刻」では、不定時法の文字盤を画面上で再現しています。割駒方式の発想と同じく、昼と夜で目盛りの幅が変わる様子を視覚的に確認できます。

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