上野公園を訪れると、今も朝夕と正午に鐘の音が聞こえます。寛文6年(1666年)に鋳造された寛永寺の時の鐘は、360年の時を超えて現在も鳴り続ける、現存する時の鐘として最も有名なもののひとつです。
寛永寺の時の鐘の歴史
上野の寛永寺は、寛永2年(1625年)に天海大僧正によって創建された徳川家の菩提寺です。時の鐘が設置されたのは寛文6年(1666年)のことで、江戸幕府の庇護のもと、不定時法の時報を担いました。
当時の上野は江戸の北東に位置し、本石町の時の鐘の音が届きにくい地域をカバーする役割を果たしていました。寛永寺の鐘は上野の山から広範囲に音が響き、日暮里や根津方面まで聞こえたと伝えられています。
松尾芭蕉が詠んだ時の鐘
「花の雲 鐘は上野か 浅草か」。松尾芭蕉が詠んだこの有名な句は、上野と浅草の時の鐘を聞き比べたものです。花見の季節、桜の雲の向こうから聞こえてくる鐘の音が、上野の寛永寺のものか、浅草寺のものか。時の鐘が江戸の人々の生活にいかに溶け込んでいたかを物語る一句です。
この句からも分かるように、江戸市中では複数の時の鐘が同時に聞こえることがあり、それぞれの鐘の音色や打ち方の違いを人々は聞き分けていました。
現在も鳴り続ける寛永寺の鐘
寛永寺の時の鐘は、幕末の上野戦争(彰義隊の戦い)による寛永寺の焼失をも生き延びました。鐘楼は何度か移転・再建されましたが、鐘自体は鋳造当時のものが今も使われています。
現在、寛永寺の時の鐘は毎日3回、朝6時・正午・夕方6時に鳴らされています。かつての不定時法では明け六つ・昼九つ・暮れ六つにあたる時刻です。定時法に変わった現在でも、その時刻を守り続けているのです。
上野公園で時の鐘を聴く
上野公園の寛永寺境内には、誰でも時の鐘を聴きに行くことができます。JR上野駅から徒歩10分ほどの場所にある鐘楼は、上野公園の噴水広場から東京国立博物館方面へ進んだ先にあります。
特におすすめは夕方6時の鐘です。上野公園の木々の中で聴く鐘の音は、360年前の江戸の人々が毎日聞いていた音と同じもの。不定時法の時代に思いを馳せながら耳を澄ませてみてください。
時の鐘をデジタルで体験する
上野まで行けなくても、当サイトの「浮世之刻」で時の鐘の体験ができます。刻の変わり目に捨て鐘から始まる鐘の音が鳴る機能を搭載しており、不定時法の時報を現代のデバイスで再現しています。


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