「体内時計を整えましょう」「朝日を浴びて概日リズムをリセット」――現代の睡眠科学が推奨するこれらの習慣は、実は江戸時代の不定時法の暮らしそのものでした。不定時法と体内時計の驚くべき接点を、科学的な視点から解説します。
体内時計(概日リズム)とは何か
体内時計とは、人間の体に備わった約24時間周期の生体リズムです。正式には「概日リズム(サーカディアンリズム)」と呼ばれ、脳の視交叉上核という部位がその中枢を担っています。
体内時計は睡眠と覚醒のリズム、体温の変動、ホルモン分泌、免疫機能など、体のあらゆる機能に影響を及ぼします。この体内時計は光を主な同調因子としており、朝の強い光で「朝が来た」とリセットされ、夕方の光の減少で「夜が近い」と睡眠準備を始めます。
不定時法の暮らしは体内時計に最適だった
不定時法で暮らした江戸の人々は、日の出とともに起き(明け六つ)、日没とともに休む(暮れ六つ)生活を送っていました。これはまさに、体内時計の同調因子である太陽光に完全に従った生活リズムです。
現代の睡眠科学は、朝日を浴びることで体内時計がリセットされ、その約15時間後に自然な眠気が訪れることを明らかにしています。不定時法の暮らしでは、この自然なリズムが社会制度として組み込まれていたのです。
定時法が体内時計に与える影響
定時法の世界では、季節に関係なく同じ時刻に起床・就寝することが求められます。冬の午前6時はまだ暗く、体内時計は「まだ夜」と認識しています。しかし社会は「朝」として活動を要求します。
この体内時計と社会的時間のずれは「社会的時差ぼけ」と呼ばれ、睡眠障害、肥満、うつ病などのリスクを高めることが研究で示されています。不定時法であれば、冬の一刻は長いため、暗いうちに無理に起きる必要がなかったのです。
季節で変わる不定時法と体内時計の同期
不定時法の大きな特徴は、季節によって時間の長さが変わることです。夏は昼が長く活動時間も長い。冬は昼が短く休息時間が長い。これは人間の体内時計が光の量に応じて活動レベルを変化させることと一致しています。
現代でも北欧の一部では、冬季に労働時間を短縮する取り組みが行われています。これは不定時法の考え方と本質的に同じであり、体内時計の季節変動を社会制度に反映させる試みと言えるでしょう。
不定時法の時間感覚を取り入れる
現代社会で不定時法に完全に戻ることは現実的ではありません。しかし、不定時法の知恵を部分的に取り入れることはできます。朝は自然光を浴びて体内時計をリセットし、夜は強い人工光を避ける。週末だけでも太陽のリズムに意識を合わせてみる。
当サイトの「浮世之刻」で不定時法のリズムを眺めながら、江戸の人々が自然と実践していた体内時計との共生を、少しだけ取り入れてみてはいかがでしょうか。
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